2023年4月13日木曜日

日刊動労千葉 第9260号

「23春闘」は何を示しているのか?


◆闘う労組なしに生きられない時代
◆労働者の新たな労働者反乱の予兆

おかしな「春闘」

23春闘は、ある意味で歴史を画するものとなった。
年末年始から首相・岸田が「賃上げを各社に求める」と表明し、経団連が「賃上げは企業の社会的責務」などと呼応した。集中回答日3月15日を待たず、大手企業が「満額」、または組合要求を上回る回答を出した。
賃上げが、あたかも政府や会社による「恩恵」であるかのような雰囲気が、マスコミをあげて演出された。これは労働組合の存在意義の抹殺、労働者から階級的な視点を解体し奪いつくす攻撃として意識的に展開されたものだ。

実質は現状維持か賃下げ

しかし、結果を冷静に見れば、これらはきわめてインチキなものだ。平均賃上げ率3・76%、「30年ぶりの水準」と報道されているが、物価上昇率(1月4・1%、2月3・1%=電気代抑制政策がなければ4・3%と言われている)と比べれば、一部大手企業ですら実質は現状維持程度だ。また、グローバル展開する一部上場企業が、人材獲得競争で大敗北する中で否応なしに賃上げを迫られた側面も強い。
そもそも、昨今の凄まじい物価上昇と比して連合の要求水準がお話にならないほど低い(だから「満額」)。しかも、過去30年間、連合が資本と一体で徹底的な賃金抑制に加担してきた(だから「30年ぶり」)。「上がる」にせよ「上がらない」にせよ、これまでと同じ政労使の「出来レース」にすぎない。そこに現場労働者の存在はなく、1ミリの闘いも行動もない。

お先棒をかついだ連合・芳野

そのお先棒をかついだのが連合会長・芳野だ。連合は「経済・社会の原動力となる『人への投資』をより一層積極的に」「国内投資の促進と産業基盤の強化」「成長と分配の好循環」「(経労委報告と)方向性は一致している」と発言。まさに、岸田や財界のものと見まがう発言だ。
3月15日の集中回答日には、あろうことか芳野は政労使会議に臨んだ。きわめて異例のことだ。どんな御用労組幹部も、この日ばかりは「交渉を重ね会社側から少しでも回答を引き出す」と奮闘ぶりを組合員にアピールしてきたものだ。
賃金水準も国家が政策として決める。労働組合はそれに率先協力する。連合の今の姿は、戦前の大政翼賛会、産業報国会まであと一歩と感じさせる。
逆に言えば、労働者支配にとって連合が果たしてきた役割は完全に消滅、崩壊した。

政労使会議で岸田首相の発言を聞く連合の 芳野会長と経団連の十倉会長 首相官邸


 春闘「前半」と「後半」の落差

こうした状況に反し、中小を中心とした春闘後半は極めて厳しいものとなった。「大企業の満額回答は中小企業の犠牲の上に成り立っている」「大企業は取引先の中小にコスト上昇分の価格転化を十分に認めてきたとは言い難い」(日刊ゲンダイ)。ニュースでは「賃上げなど、どこの話か」の声があふれた。

 

共同通信 4・4

「格差拡大」春闘

とりわけ非正規雇用者の賃上げ実施率は55・7%(東京商工リサーチ)。しかも水準はきわめて低い。日本郵政は、正社員に平均4800円のベア、非正規職労働者にはゼロ回答だ。JR各社は、本体も軒並み極めて低額回答だが、グループ会社においては話しにならない超低額回答が並んだ。
まさに「格差拡大」春闘そのものだ。95年日経連報告(「労働者の9割を非正規に」)が言うように、世の大半の労働者には賃上げなどない、まさに「生かさず殺さず」と言わんばかりの飢餓賃金を強制すると宣言するものだ。

世界のストの嵐が日本にも波及しつつある

他方、23春闘は、明らかに新たな労働者反乱の予兆を確実に示した。この数年来、世界を覆いつくしている労働者反乱、ストライキの嵐が日本にも波及しつつある。
4つの個人加盟ユニオンが呼び掛け「非正規春闘」が展開された。かつや、スシロー、スーパー、コールセンター、語学学校、学習塾など働く労働者が一律10%の賃上げを求め初めて共同でストライキに立ち上がった(3・9)。JRAでは厩務員らの属する4組合がストライキを通告、1組合がスト回避したものの、3組合がスト実施し(3・18)改悪された賃金制度の廃止を要求した。

理化学研究所本部前でストライキを行う
職員ら 3月29日午後、埼玉県和光市

医療労働者の全国規模のストライキも展開された。労働環境改善、賃上げ、スタッフ増員などを求め「自己犠牲も限界だ」と公然たる闘いに立ち上がっている。 理研では、8割近い非正規の研究職員、事務職員が業務を支えているが、「無期転換ルール」の趣旨に反して5年や10年で雇い止めを宣言した理研に、雇い止め撤回を求めストライキに立ち上がった(3・29)。
連合の存在によって労働組合や団結して闘うことに希望を見いだせず、抑え込まれてきた労働者の怒りの爆発が始まっている。
連合幹部は、「ストをしても国民から支持されない」と言っているが逆だ。ストライキをとりまく意識は間違いなく変わっている。労働者が意を決してストに立てば、それは圧倒的に支持される状況が広がっている。
闘う労働組合なしに、大半の労働者は文字通り生活していくことすらできない時代が到来した。
こうした中で、小なりとはいえ「賃上げや労働条件をかちとるのも、戦争を止めるのも、労働者の団結した闘いの力だ」ということを示した動労千葉の3・18~19春闘ストライキの意義は限りなく大きい。
闘う労働運動の再生にむけ、確信も固く闘おう。

(別表)JR各社の春闘回答

・JR北海道 ベア 1000円
・JR東日本 ベア4000円+所定昇給額の1/4
(平均5,947円)
エルダー 3000円加算
・JR貨物 ベア700円+基本給の0・1%(約1000円)
シニア 1000円加算
・CTS ベア 2号俸分を加算(約千円前後)
契約・パート社員はゼロ回答
・JESS 社員 ベア2000円
契約 ベア1000円
パート時給10円加算
・JR東海 ベア1000円
・JR西日本 ベア3000円
シニア3000円加算
契約 時給20円加算
・JR四国 ベア2000円
・JR九州 ベア3000円