ボーイング787事故「高くついた外注化の教訓」
外注化と軽量化で深刻な事態
「高くついた外注化の教訓」
ある報道の見出しです。ボーイング787型機のトラブルが頻発しています。別表のようにバッテリー異常だけでなく、エンジンやブレーキ、車輪の不具合、燃料・オイル漏れなど「故障連鎖」と言われています。
787型機は、翼やかじ、ブレーキなど、従来は油圧で動かした部品を電気信号とモーター駆動に置き換え、徹底した軽量化で燃費は2割も向上したといいます。17機を保有する全日空は従来の中型機63機をすべて替えると、利益が年間100億円も増えるそうです。しかし、無理な軽量化が重大な結果を招いたのです。
設計・開発・製造を丸投げ外注化
最大の原因は、端的に言って「外注化」です。
ボーイング社は十数年前にダグラス社と合併した頃から、短期的な利益が最優先となり、外注化が費用節約策として称賛されるようになりました。設計・開発・製造のすべてを外注化して製造コストを引き下げようとしたのです。
ボーイング社は、設計と重要な構成要素の製造を日本や中国、欧州など国内外の部品メーカーに丸投げしました。自社でほとんど部品を生産せず、液晶テレビ製造のように部品をメーカーから買って組み立てているだけなのです。
部品メーカーに対しても、自社で作成した詳細な青写真を提示するのではなく、大雑把な仕様を示すだけで設計・開発段階から丸投げです。ボーイング社は、設計と製造を監督する能力を著しく低下させていることは間違いありません。
「われわれは、この種の技術が必要な仕事を、実際にはやったことのない人たちにまかせてしまった。その上、本当に必要な監督も行わなかった」(事故後のボーイング社民間機部門の責任者のコメント)