2013年11月22日金曜日

強制出向無効確認訴訟第4回口頭弁論傍聴記

別所 基明

外注化による偽装請負と不利益の実態を

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 この裁判の最初の大きな争点は、外注化の実態(偽装請負など)を明らかにするため、何としても被告側から「業務委託契約書」(以下契約書と略)を提出させることだったことは記憶されていると思います。
 被告側がこれを頑なに拒否し続けたため、原告側は前回の第3回公判(7/3)で契約書の開示を求める文書提出命令を申し立てました。行き詰まった裁判長は9月13日に裁判の進行協議を行ない、被告側への提出命令は出さなかったものの、現時点での契約書を公証役場で内容証明を受け、その存在と内容を確定させることを決定したのです。
 この結果、当初予定されていた9月20日の第4回公判は延期され、今日11月13日に開催されることになったのです。
 いよいよ外注化と強制出向による偽装請負と労働者に対する不利益の実態についての論戦が本格的に始まる重要な公判でした。

“偽装請負第一弾ですね”

 13時半からこの裁判の第4回口頭弁論が開始され、原告席と傍聴席は動労千葉・動労水戸・動労連帯高崎の組合員と支援の労働者でほぼ埋め尽くされました。
 最初に、団藤裁判長が原告から提出された準備書面③を確認し、被告側代理人の冨田弁護士に「被告側は原告のこの準備書面に反論を出しますか」と質問し、被告側が「出します」と答えたところ、「次回の公判までですから年内で大丈夫ですか」などと言って、今日はここまでとし次回を決めて終わろうという意図を見せたのです。
 すかさず原告側の石田弁護士が「準備書面の補足説明をやります」と発言し、裁判長は今気が付いたような顔をして「そうですね」と答えて、原告側の陳述が始まったのです。原告側の準備書面の補足説明も聞かずに終わろうなんて、まったくふざけきった裁判長です。
 まず石田弁護士が、準備書面で触れた偽装請負の実例の中から、「外注先の管理者を通さずに指示が行なわれている例」として台風の影響でダイヤが乱れた時、MTS(水戸鉄道サービス)の管理者では対応ができず、JRの管理者が直接指示を行なったこと、「通告」の問題として、CTS側は「単なる情報提供」にすぎないと言っているが、JRとの団交の中では、JRは「運転取り扱い上の指示」だと答えていること、を明らかにし、この違いは何なのだ、根拠を明らかにすべきだと迫りました。さらに「技術指導と労務管理」の問題に触れ、JRが外注先の労働者を直接指導した例として、JR千葉支社の支社長名で「教育訓練」の文書が、日付まで指定されて、CTSの労働者に配布され、訓練が行なわれたこと、しかも労務管理の一部である出欠確認までJRが行なった、と報告して、労務管理までJRが行なったというのはどういうことなのか、何故なのか、と迫りました。
 次に森川弁護士が立ち、「会社側は『外注化しても労働者には具体的な不利益はない』と言っているが、JR北海道の事故の実態を見て欲しい、あれこそ民営化・外注化の結末だ」と喝破し、「この結果、労働者に大きな不利益が発生している。現場にはCTSの矛盾が溢れている。JRはここをどう認識しているのか。現場に入って見て欲しい」と訴えて初回の陳述を終わらせました。
 裁判長が被告側に12月25日までに反論の準備書面を提出するよう要請し、原告側には「(証人しらべなど)今後の裁判のイメージなどについて次回出して欲しい」と言ってきたのに対して、森川弁護士が「被告側の反論も見ながら今後実態をさらに出したい」と主張したところ、「では今日のは偽装請負の第1弾ですね」などと言ったものだから、傍聴席から「何が第1弾だ」と怒りの声が挙がったのは当然です。
 次回は来年1月22日(水)午前10時30分からと決定して、この公判を終了しました。

総括集会

 会場を弁護士会館に移して、川崎執行委員の司会で総括集会が開催されました。
 まず森川弁護士が、「外注化による不利益はないと会社側は言っているが、外注化によって本来一元管理すべき鉄道業務に様々な矛盾が生じている。その意味で、台風の時にJRが直接指示したなどの例を挙げた。不利益がないなどとは絶対に言えない。社会全体に様々な矛盾が出ているではないか。JR北海道を見るがいい。線路破断などに加えて合理化で人員を削減した結果、事故が多発しており、労働者への犠牲転嫁がはなはだしい。被告も裁判所も早く終わりたいと思っているようだが、これからも実態をどんどん出して追及する」と述べた。

外注化はJR北海道問題と一体だ

 続いて鈴木弁護士が、「今日の公判でこの裁判闘争の争点がわかったと思う。偽装請負の実態を明らかにし、具体的な不利益に対する反論を行なった。具体的な実態を突きつけたので被告側は反論せざるを得ない。裁判所は被告の味方をするが、我々はこれを許さず追及する。今回の外注化の問題はJR北海道の問題と一体だ。不利益はないと主張する会社側に対しては、反合運転保安闘争路線を基礎に経済主義に対する反論として行なう」と決意を表明されました。
 次に裁判に参加した原告組合員の紹介と報告として、10月1日の計画業務外注化で強制配転された幕張支部の井上さん、長田書記長、関執行委員、勝田車輛センターで働く動労水戸の根本さん、動労水戸の石井委員長、動労連帯高崎の漆原副委員長から、それぞれの職場での目に余る偽装請負の実態と闘いが報告されました。幕張支部の井上さんは間もなく原告団に加盟するそうです。また、関執行委員からは、業務中に亡くなった金子さんの労災認定獲得に組合として取り組むことを決定したと報告されました。
 次に動労千葉を支援する会の山本事務局長が立ち、「鈴木弁護士が言われた『反合運転保安闘争路線で不利益と闘う』というのはいいと思う。この闘いは全世界の同じような状況におかれた労働者と結びついている、ともに闘いましょう」と決意を表明した。貨物協議会の佐藤議長は「JR貨物は人件費を削減して利益を出した。今冬の一時金も夏と同様に厳しいだろうが、我々はこれを許さず闘う」と決意を表明しました。

『見せかけ出向(偽装出向)』だ!

 集会の締めくくりには、田中委員長が立ち、「外注化、偽装請負に対して労働組合として闘いに立ち上がったのは我々が始めてだろう。外注化によって労働者が不利益を被ること、安全が崩壊させられること、に対して闘う意味のある闘いだ。今の社会の在り方を問う根本的な闘いだ。JRが外注先に労働者を強制出向させ、外注先はそのプロパー社員をJRに出向させて教育を行なっている。これは『見せかけ出向(偽装出向)』だ。外注化によって労働者の雇用と安全が破壊され、資本だけが儲かっている。こんなことは絶対に許せない!。動労千葉はJRとのこの闘争を徹底的に闘うし、CTSとも全力で闘う。そして組織拡大を勝ち取る。1047名解雇撤回闘争と結合させて大きな闘いに発展させよう!」と檄を発して総括集会を終了しました。
 次回は来年の1月22日です。それぞれが自分の職場で反合・運転保安闘争を闘い抜き、最高裁へ向けた10万人署名を集め、今冬の動労千葉物販を推し進め、その勢いをもって次回の強制出向無効裁判の公判闘争に立ち上がりましょう。

房州鉄道研究会サイトから転載