外注化は何をもたらしたか
JR北海道の安全崩壊と
京浜東北線川崎駅事故
京浜東北線川崎駅事故
今こそ国鉄分割・民営化を問いなおすとき
「JR崩壊」―終わらぬ事故取り返しのつかぬ事態になる
鉄道の安全が崩壊している――JR北海道では昨年だけで7回ものエンジン出火・発煙事故が起きました。さらに9月19日の函館線の脱線事故以降、約270カ所でレール異常を放置してきた実態が明らかになりました。01年の石せきしょう勝線事故では車輪に40㌢もの剥はくり離が発見されました。基本的な検査・修繕が行われていれば絶対にあり得なかったことです。
安全の崩壊はJR北海道だけではありません。今年2月23日のJR京浜東北線川崎駅構内における脱線転覆事故は、そのことを衝撃的に示しました。事故で脱線した列車はたまたま回送列車で乗務員も軽傷でした。しかし一つ間違えば「第2の尼崎事故」になっていました。
JR北海道では極限的な外注化で事態をまともに把握できないほど安全が崩壊しました。京浜東北線事故では、現場が5社にバラバラに発注され、指揮命令系統などの鉄道業務の基本中の基本まで解体されていました。民営化・外注化が「JR崩壊」ともいうべき安全崩壊を引き起こしたのです。
「雇用と安全」が破壊される全ては民営化・外注化の結果
民営化による利益優先は、2000年を前後して「駅ナカ」事業などに資金や人を移すところまで進みました。そして、鉄道事業そのものは次々と下請・孫請会社に外注化してきたのです 早くも数年後にはJR各社で次々に線路が折れる異常事態が発生しました。利潤追求と安全は決して相容れません。JR西日本が「稼ぐ」をスローガンに無謀なスピードアップを強制し、107人の生命を奪った尼崎事故が示すとおりです。そして、今まさに民営化・外注化の破綻があらわになっています。 外注化の目的は低賃金化・非正規職化です。
JR東日本の子会社である(株)ステーションサービスは駅業務の本格的外注化のために設立されました。正社員で15年働いても定期昇給はわずか3回。一生涯20万円程度の賃金からあがらない。もともとあった定期昇給はわずか1年で解体されました。これが外注化の行き着く先です。
これは鉄道に限った話ではありません。社会全体に民営化・外注化が蔓まんえん延しています。そしてさまざまな職場はバラバラにされ、膨大な労働者が非正規雇用に突き落とされてきました。絶対にあいまいにできない問題です。
国鉄分割・民営化が出発闘いは何も終わってない
民営化・外注化は鉄道以外でもさまざまな事故を引き起こしています。2012年4月の関越自動車道高速ツアーバス事故は、「規制緩和殺人事件」というべき事故です。 同年12月の笹さ さご子トンネルの天井板落下事故は、道路公団の民営化でまともなメンテナンスがされなくなったことで起こりました。
2013年1月から出火などのトラブルが相次いだボーイング787の事態は、すべてバラバラに外注化して、本社では一切技術力を持たなくなった結果です。
この民営化・外注化が全社会に蔓まんえん延する出発点となったのが、1987年の国鉄分割・民営化でした。JRに移行する過程で国鉄労働者20万人が職場を追われました。しかし、労働運動全体としてはほとんど何もできないまま後退を強いられました。 その最大の理由が国鉄改革法にあります。「国鉄とJRは別会社」「新規採用だからJRには採用の自由がある」と定められました。「採用の自由」の名でJRは自由に選別して首を切れる。「解雇自由」への扉があけ放たれたのです。
同じ年に労働者派遣法が施行されました。そして、非正規職や格差・貧困が蔓延する社会が生み出されていきました。85年に16%ほどだった非正規職率は、いまや38%にまで達しています。事態はさらに進み、さまざまな職場で法律も無視したデタラメな解雇が横行しています。
すべて国鉄分割・民営化から始まりました。だからこそ国鉄分割・民営化はまさに現代の課題です。ここで勝利すれば、労働運動を復権し、今の現実をすべてひっくり返せます。
JRの職場での外注化攻撃は「第2の分割・民営化」というべきものでした。動労千葉は「反合理化・運転保安確立」という考え方をうちたて「雇用と安全を破壊する外注化は絶対に認められない」と闘っています。その闘いは10数年にわたって外注化を阻止し続けてきました。
そして現在、JR本体と下請会社を貫く闘いを組織し、外注化されたところから職場と仲間を取り戻す新たな挑戦を開始しています。
「闘いなくして安全なし」―闘う労働運動の復権を
職場の安全と労働者の権利が破壊された責任の一端は労働組合にあります。民営化・外注化、合理化に反対して闘うことは、本来労働組合の役割です。しかし、多くの組合は真正面から闘えず、率先して協力してさえいます。それが安全と権利の破壊を許してきました。
動労千葉は、尼崎事故と04年からレールが次々と折れる事態をきっかけに、数年間にわたる危険箇所でのスピードダウンなどの安全運転闘争を闘いました。そして削減されたメンテナンスコストを回復させ、数百㌔にわたってレールを交換させたのです。まさしく「闘いなくして安全なし」です。
労働組合には、民営化・外注化と闘い、雇用と安全を守る力があります。
国鉄1047名解雇撤回・JR復帰をかちとり、闘う労働運動の復権を!
6・8タブロイド判ビラ2、3面へのリンク