2018年9月22日土曜日

動労水戸情報633号

http://file.doromito.blog.shinobi.jp/64daf559.pdf


特急1人乗務・ワンマン拡大は規程違反
列車と乗客の安全は二の次?

 この10月20日からJR水戸支社は常磐線特急の車掌を基本的に1人乗務に、また、水郡線のワンマン運転をさらに拡大しようとしていますが、この間の団体交渉の中で、会社の安全に対する姿勢がとんでもない方向に向いていることが明らかとなってきました。

列車防護は遅れたら意味がない


 車掌は緊急時には列車を止める手配を行い併発事故を防止する役割が義務づけられています(列車防護)。8月31日の団交で動労水戸は、本来最後部にいるべき車掌が車内改札等のために車内に入っていたら、常磐線の特急は10両もあるのに、緊急時に最後部まで戻るのに時間がかかり、速やかに列車を停止させることができず、防げた事故も防げなくなると指摘しました。それは、3年前に実際に常磐線で起きた事故で、踏切を通過中に列車の中間に車が突っ込み衝突、最後部にいた車掌が気づいて列車防護を行い、対向列車との衝突を未然に防いだことがあるからです。
 ところが、会社は「車内に入っていると即応答は難しい。列車防護が遅れる懸念はあるが、安全レベルは低下しない」と回答。どうして安全レベルは低下しないと言い切れるのか、まったく根拠も示さず「1人で大丈夫と判断した」と繰り返すばかりです。

ホームの状態監視は絶対ではないのか?

 車掌は列車が駅に進入する際、ホームのお客様に注意するため状態監視することが定められています(「状態注意」社内規程)。
 9月10日の団交で組合側が、車内改札等を行っていて次の停車駅まで最後部の車掌室まで戻れなかったらどうするのかと追及すると、驚くべきことに会社は「列車が止まってからでもドアを開けてもらいます」と回答。その場合、列車がホームに進入する際の状態監視はしないということであり、絶対にあってはならないことです。
 さらに、会社はいま列車の中間の5号車でドア扱いすることを画策しています。列車の最後部以外でのドア扱いは過去の事故の教訓から固く禁じられてきました。列車の最後部以外でドア扱いすると、ホームにドアがかかっていないところで開扉する危険があるばかりでなく、発車後、車掌の位置より後方のホームの状態監視、後方確認はできません。これまでの安全の積み重ねを一気にぶち壊す暴挙です。

ワンマン運転では後方確認を切り捨てている


 さらに、車掌は列車が駅を出発する際、列車の最後部がホームを過ぎたところでホームや線路に異常がないことを確認することが定められています(「後方確認」社内規程)。
 9月10日の団交で組合側は、水郡線のワンマン運転では、運転士は後方確認できないため、規程に定められた確認ができない状態になっていると指摘、ワンマン運転は規程違反ではないのかと追及すると、会社側は回答につまり団交は中断。
 そのすえに回答した言葉は「ワンマン運転ではできません」のひとことのみでした。過去には車両後方に高校生がぶらさがっていたという事件も発生しています。ワンマン運転はそもそも規程違反を犯しているのに、さらにその本数を増やすことは危険が増大することです。

鉄道事業の根幹にかかわる一大事


 特急車掌1人乗務とワンマン運転の拡大は、こうした列車の安全は二の次で、車掌の人減らしを強行することはもはや明らかです。安全綱領の第一は「安全は輸送業務の最大の使命である」であり、第二は「安全の確保は規程の遵守及び執務の厳正から始まり、不断の修練によって築きあげられる」です。会社の主張する「究極の安全」とは安全綱領も無視して「効率化」人減らしを強行することなのか、絶対に認めることはできません。
 また、特急車掌1人乗務は、これまでできていたことがことごとくできなくなる、乗客サービス上も問題が山積していますが、団交では何一つ有効な対策は講じられていないことが判明し、会社は何の根拠もなく「1人でできると判断した」と繰り返すばかりでした(詳細別掲)。

仲間とのつながりを破壊する効率化(合理化)と外注化
 
 労働組合として効率化(合理化)についてどう考えるかは、国鉄以来大きな課題になってきました。

 資本主義は、会社で働かなければ生きていけない労働者によって成立しています。会社は、労働者が生きるために一生懸命で仲間と競争している状態が、資本増殖のためにもっとも理想的状態です。ですから効率化(合理化)は、人減らしであると同時に職場の仲間としてのつながりの破壊を伴うのです。
 労働者が一人一人分断され孤立しているとき効率化は際限なく進められます。労働組合が解体されたり、会社の言いなりになっている企業では「心が破壊され」「過労死」が蔓延しています。
 
 勝田運輸区では、本事案で車掌28人削減が提案されています。それはそのまま、仲間との分断として進められているのです。既に、仲間への解雇や適性検査に不合格・即座に強制配転が行われているのも勝田運輸区です。
 問われているのは一人一人ですが、試練を通して一つになっていくのはこれからです。「今だけ、金だけ、自分だけ」はもう通用しません。動労水戸と一緒に闘いましょう!




●車掌1人で10両改札回りきれるのか「調査の結果おおむね回れている」
「回れるところで回ってもらえばよい」
→「おおむね回れている」は現場の車掌の感触とはまるで違う

●誤発売・運休の場合
「現在も100%対応できているわけではないのでこれまでと変わらない」 
→お客様どうしのトラブルも増えることも予想されるが

●遺失物・切符捜索
「現在もすべてできているわけではない」
「できなかったら終着駅で対応する」  
→切符の捜索や、財布・スマホなど緊急を要するものも対応不可に

●非常ブザー
「車掌が出なければ運転士が対応し車内放送で車掌に伝える」
→運転士にも負担をかけることになることは必至

●カード決済・現金不所持の対応 
「そのお客様に最後部まで来てもらい駅に引き渡す」
→1号車から10号車でもか?来てくれなかったらどうする?

●多目的室の使用、喫煙や車内マナーの注意、グリーン車の通路使用など
「お客様と遭遇する頻度は現在よりも下がるが、車掌が巡回中に声をかけてもらうことは変わらない」
→車掌1人では対応が難しいと言っているのにまったく回答になっていない

●痴漢などの対応
「警察が乗っていれば協力要請する。お客様に手伝ってもらうこともある」
→あてにできないことを前提とした驚くべき回答

●新幹線で起きたような殺傷事件
「車掌1人でも2人でも車掌の責務としては同じ。警察と合同の訓練を計画しているが全員は無理」
→発生したらどうするかではなく、発生させないように車内巡回を強化する体制をつくる方が先では

●水郡線ワンマン拡大の理由は何か
「利用状況が悪くなっている中で、線区や列車を残すことがサービス」
「いろいろ選択肢があるがワンマン拡大(車掌をなくす)することもそのひとつ」 
→交通弱者が利用しづらいワンマン列車を残すことがサービスなのか

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