2011年5月に発生した石勝線列車脱線火災事故では、減速機と推進軸が脱落して脱線。トンネル内で火災が発生した。
「仕業検査で故障発見しなくていい」?!
安全軽視の仕業検査延伸を撤回しろ!
11月2日、仕業検査の有効期間の延伸をめぐり、総連合申第14号に基づくJR東本社との団体交渉を行った。交渉概要は以下の通り。
|
2011年5月に発生した石勝線列車脱線火災事故では、 減速機と推進軸が脱落して脱線。 トンネル内で火災が発生した。 |
なぜ新系列以外も対象なのか
組合 東日本管内12支社で総合車両センター、車両センターの配置数、車両職の標準数はどういう数か。
会社 総車セは5、車セと車両職の標準数は手元にない。後日回答する。
組合 今回の提案の対象車種は何か。
会社 整備標準での車種の分け方における「電車、気動車、新動力車」だ。
組合 東日本全体で対象車両は何両か。
会社 今回の対象になる車両数は約9千両だ。電車が8千両以上、DC、新動力車は数百両だ。全体の9割以上が新系列車両だ。
組合 新系列以前の列車は対象外か。
会社 対象になる。電車であれば211系、気動車であれば100系も対象だ。
組合 対象外になるのは何か。
会社 機関車、客車、SLだ。いわゆる電車、列車はすべて対象だ。
組合 新系列以外も対象になる理由は何か。
会社 全体として車両の信頼性が向上しているということだ。
「9日」とした根拠は何か
組合 有効期間を「9日」とする根拠はなにか。検証などは行ったのか。
会社 元々、整備実施基準では3つの車種の有効期間は10日になっている。2000年に技術的な検証を行って国交省にも届けている。今回は社内規定の整備標準を変更する。
組合 具体的な検証内容はなにか。
会社 故障件数や消耗品の取り替え、潤滑油やパンタグラフのすり板、ブレーキの制輪子など整備標準の仕業検査で定めている項目を検証している。一番短いもので30~45日もつと確認している。安全率も考えて10日と整理した。今回、改めて同じ内容を調べている。
組合 今回の調査はいつか。
会社 過去3年だ。
組合 走行距離の変化はどうか。
会社 基本的に走行距離に大きな変化はない。
組合 調査結果の違いはどうか。
会社 A故障の件数は2000年の5百件以上に対し、今回は3百件超に下がっている。103系ではブレーキのストローク調整や消耗品が一番短く30日くらいだったが、そういった車両がなくなった。
仕業検査で故障を発見している
組合 仕業検査で故障を見つけることも結構ある。それを延ばして見落とした場合、重大事故につながりかねない。
会社 見つけるのが9日になることで、ただちに輸送障害や安全を脅かすものはなかった。
組合 推進軸のネジが緩んでいたことがある。北海道では折れて大事になった。その場で見つけたから直せた。
会社 推進軸については仕業検査ではなく、車両の信頼性を設計の段階で向上させて対策するものだ。ボルトを正しく取り付けて対策すれば、仕業検査周期で見つけ出さなければいけないものではない。
組合 締め付けが悪いとねじれが出て緩むことがある。最後は人間が締めている。
会社 ヒューマンエラーの対策はしている。
組合 その不備を見つけるのが検査だ。現場で見る機会が減れば、未然に防げるものも防げなくなる。
会社 仕業検査は、国土交通省が出している鉄道の技術上定める省令にある「列車の検査」に位置づけられている。周期は各鉄道事業者が決め、実施基準を届ける。列車として安全に運行できるように日々行う検査で、消耗品の確認も必要だとされている。
故障をゼロにするための検査を見直すわけではない。切り分けて考えるべきだ。
組合 現場でそれは切り分けられない。決められたところを見るのは当たり前だが、それ以外でも壊れていれば直している。
会社 90日ごとの交番検査・機能保全は「定期検査」で、先90日間は故障が起きないように検査している。6日で発見されたものが故障になるようなら、交番検査・機能保全の検査がおかしいということだ。仕業検査で不具合が発見されることはまれにあるが、発見が9日に延びたとしても、ただちに安全上や列車運行上の問題はないと確認している。
実際の運用はどうなるのか
組合 運用上や各支社の故障状況などに応じて「6日」となる場合もあるのか。
会社 できるだけ上限9日に合わせて運用を組んでもらう。実際に変わるのはダイ改以降だが、詳細はまだ決まっていない。故障件数は考え方に入らない。
組合 これまで安全上6日としてきた。それをリミットいっぱいにする。安全上の考え方が変わったのか。
会社 安全に関わる考え方や検査項目は変わっていない。今の技術的な基準で十分に10日持つということだ。安全は損なわれない。
組合 A故障の件数が減ったから9日にしてよいということか。
会社 それは別だ。総車セ、車セの故障防止の取り組みの成果だ。検査項目にある部分が10日間もつかを調査した。
組合 車両のトイレが持たない場合はどうするのか。
会社 清掃やトイレの便抜きの周期はある。仕業検査とは別に車両運用として考える。仕業検査が9日だから便抜き回数が少なくなるわけではない。
組合 今は仕業検査と一緒にやっている。別々にやるのか。
会社 そこは作業の方法による。どのタイミングで行うかはグループ会社との調整だ。基準の範囲で、支社個別の運用の中で判断される。
組合 総車セでの仕業検査は変化するのか。
会社 仕業検査は車両運用で定期的に指定される。輸送障害や列車乱れで運用変更が発生すると、予定した箇所と違うところに依頼することがある。総車セへの依頼はその都度行われるので、一概には言えない。
起算日の考え方について
組合 起算日の変更の理由は何か。
会社 例えば、夜に仕業検査をやって0時をまたいだ場合は暦日の管理が煩雑になる。検査当日に使わないなら翌日からのカウントとした。今までは仕業検査後4日目に運用をしたら、その運用日からのカウントだった。「発車前に検査する」というそもそもの仕業検査の考え方に合わせ、かつ管理しやすいようにという考え方だ。
組合 災害時は10日を超えることもありうる。
会社 基準に災害時の特例はない。10日を超えた場合、運行開始前に臨時で仕業検査をやってもらう。予想できる場合は、先行して行うこともある。
グループ会社の要員問題
組合 仕業検査の委託と直営の割合はどうか。
会社 9割以上は委託だ。直営は田端運転所、青梅車両センターなどだ。
組合 仕業検査の業務量はどう変わるのか。
会社 車両運用次第だ。委託先の構内作業の役割分担、作業環境にもよる。全体として検査数は減り、業務量の減少はある。
組合 グループ会社を含めて要員が減っているから業務量も減らすのか。
会社 直接にそういう問題意識からではないが、仕業検査の見直しで柔軟な車両運用、作業体制が作れる。
組合 柔軟な車両運用とはなにか。
会社 人身事故などで運用変更する場合、仕業検査のタイミングが少ない分、使える車両が増えるなどだ。
組合 要員数と車両数が減るということか。
会社 そうだ。現時点で具体的な数字はない。
派出検査の将来像について
組合 派出検査の将来像はどういう考えか。
会社 12支社で状況はそれぞれだ。新型車両が入れば車両故障も減る。モニタリング装置で予めデータが上がってくれば、検査場所の見直しはある。将来的には全体の車両の性能等を見て配置を検討していくことになる。
組合 動物との衝突が相当数ある。その場合に派出から出動することも考慮すべきだ。
会社 否定するものではない。派出廃止はそれも見て行われている。動物との衝突をどう減らすかは取り組みを行っている。
検修業務の将来像について
組合 検修業務全体の将来展望について、あり方はどう考えているのか。
会社 機械化・システム化を図って、人ならではの創造的な仕事に注力する。任せられるものは機械に任せる。車両性能が上がって、モニタリング装置でデータ化された時、社員としてどう判断するかという体制に変わっていく。同じことは車両、設備、電気など様々な部分で行われる。変化点については検証し、安全が担保されることを確認する。
組合 仕業検査も構内運転も多くが委託になっている。構内運転の担当者は、車両検修の経験はほぼゼロだ。仕業検査の担当も、交番検査・機能保全の見習いはやるが、自分で本務になってやることはない。仕業検査の作業量が減ればその分、車両を見る回数が減る。技術継承も問題になっていく。
会社 構内運転士は車両の教育を受け、入換に必要な能力はある。検査数については定期検査を含めた全体で見ている。教育についてはグループ会社とJR東本体が教育体制を整えて、双方で技術を持つことが大事だ。安全教育、技術継承は行っていく。
仕業検査延伸の提案撤回を
組合 そもそも古い車両も同じ考えというのはおかしい。何のための仕業検査か、その根本のところで認識の大きなズレがある。それは現実に車両に触って見ているかどうかの違いだ。安易に検査周期を延伸すべきではない。提案撤回を求める。
(以上)