労働運動をやっている者として、歴史の選択が問われている思いを強くしています。労働運動の現状をなんとしても打開して、歴史をつくる存在とし て労働者が登場しなければいけない。
安倍政権は、集団的自衛権や改憲の裏で労働組合の解体と再編を進めている。これと対決をして労働組合がもう一度力を取り戻さなくてはいけない。
◉戦争と労働組合 日本の労働組合の歴史の中で、労働組合運動が再編・解体された歴史は3回ありました。
一度目は1940年、労働組合はすべて解散を命じられ産業報国会になり戦争に協力をしました。
二回目は、1950年の朝鮮戦争の時、敗戦後に雨後のたけのこのように闘いを開始した労働組合がGHQの介入で総評に再編されました。総評はそ の後、現場の怒りの声で闘う力を取り戻しますけれども、その時はGHQによって朝鮮戦争に賛成する労働組合として産別会議をつぶしてつくられた。
三度目は、1989年に総評が解散され連合がつくられた時です。国鉄分割・民営化によって総評の中心部隊だった国労が破壊され総評は自ら解散 した。
中曽根は「国労をつぶせば総評を解散に追い込める。総評が解散すれば社会党を解散に追い込める。明確に意識してやった」と語りました。お座敷をきれいに掃除して立派な憲法を安置できる、と言いました。
そして今日です。安倍は連合すら再編して改憲・戦争に賛成する労働組合につくり変えようとしています。
憲法9条について言えば賛成は世論調査の20数%しかいません。安倍は労働組合が先頭に立つ以外に9条改憲はできないと思っている。安倍にしてみれば改憲容認の連合ですら中途半端。これをもう1回再編してかつての産業報国会のようにしようとしている。
◉櫻井よしこの主張 労働運動をめぐっていま何が起きているのか。安倍政権の政策推進の中心に葛西・JR東海会長と櫻井よしこが座り、美しい日本の憲法をつくる国 民の会の代表発起人にも葛西と櫻井が入っている。
その櫻井が産経新聞で「連合を分裂させよ」と主張しています。
〈官公労をもう一度つぶして連合を分裂させよ〉〈連合を分裂させるには三つの理念が必要。愛国心と改憲、原発推進〉〈これを担うのは日本最大の労働組合UAゼンセン。UAゼンセンよ、連合を分裂させよ〉
こういう論評です。これは一評論家の主張ではない。安倍政権の労働組合政策そのものです。
UAゼンセンは元をたどれば、繊維関係の産業別労働組合にすぎません。しかし、それが政府の手によって日本最大の労働組合に育成された。流通・ 情報・化学すべてを飲み込み、あらゆる企業と話をつけてユニオンショップ制度を結んで従業員をそっくり労働組合に加入させてしまう形で連合最大の労働組合になった。
この労働組合は、連合本部に対して〈集団的自衛権を認めるべきだ。主権国家である以上、徴兵制をとらないと言うことは自ら戦わないことを表明することになり不適当だから削除しろ〉と要求している。
つまり、徴兵制を認める労働組合が水面下で育成され、それと一体で集団的自衛権・改憲が進んでいる。このことを本当に重視しなければいけない。労働組合が産業報国会のようにならな ければ戦争はできません。もう一度、 労働組合が力を取り戻すことが絶対に 大事なのです。
◉力を取り戻す展望 私は、その展望を持ち、そしてその展望を広げたいと思っています。
この30年、国鉄分割・民営化以来の新自由主義は限界に行き着いている。社会そのものが崩壊しつつある。年金資金まで株に突っ込んだ。ここまでやるしかない支配の崩壊。日本の地方自治体896が破綻し消滅する危機までいっています。
日本の非正規労働者は2千万人。女性の57%が非正規。子どもの6人に1人、独身女性3人に1人が貧困。すべてが限界に至っている。
この現実と闘って労働組合がもう一度力を取り戻す。その道を探ることは必ずできると僕は思っている。
そのことを示してくれているのが韓国・民主労総の闘い。ゼネストは本当に多くの困難がある。だけど民主労総の指導部は百も承知の上で「ゼネストでパククネ政権を退陣に。新自由主義政策に決着を」と立候補して全組合員投票で信任を得た。
同じようなことが沖縄や年金をめぐって起きると思います。大阪の橋下は国鉄分割・民営化と同じことをやろうとした。全員解雇して再雇用して労働組合をつぶす。それが否決された。
戦争への怒りと、社会崩壊への怒りの二つが結びついた時に日本の労働者はもう一度力を取り戻します。
6月7日、戦争と民営化に反対する国鉄1047名解雇撤回の集会を日比谷公会堂で開催します。ぜひ6・7集会への参加をお願いします。
(5月19日に弁護士会館講堂クレオで開催された「とめよう改憲と戦争、つぶせ裁判員制度」集会での発言より)
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