2013年8月25日日曜日

9・25判決を迎え撃とう

動労千葉委員長 田中康宏

 労働者の闘い方いかんによって大きな可能性が開ける時代が始まっていることは間違いありません。動労千葉も本気になってこの時代に挑みかかっていきたいと思っています。
 そのためにも今の時代を真正面から見据えなければいけない。今、目の前で始まっていることは、国鉄分割・民営化以来の新自由主義政策の矛盾の爆発的噴出なんだと思います。
 例えば、このかん世界で起きている鉄道事故の現実を見てほしいと思います。
 国営だったり民営化だったりいろいろ条件は違います。だけど、あらゆることが規制緩和されていたという事実は変わらない。日本で言ったらJR北海道の現実です。今年に入って列車が火を吹く事件が7~8件起きています。これは異常事態です。
 それとアメリカ・デトロイト市の破産。デトロイトでは警察にまともに賃金が払えなくなった。その結果、警官が出動できなくて殺人事件が全米一多い街になった。市民が街から逃げ出すしかなくなっています。
 社会が全部崩壊している。新自由主義の矛盾が全面爆発している。こんなことが長続きするはずありません。でもさしあたりは労働者に対する攻撃になって襲いかかろうとしています。
 日本では安倍政権が参議院選挙後に国家戦略特区構想を打ちだしました。そこでは、解雇規制を緩和する、労基法の適用を緩和する、アメリカのように公立学校の民営化をやると言っています。「特区」とはどこか。東京圏と大阪圏と名古屋圏なんです。これは日本全国で「特区」の口実の下に規制緩和をやるということに決まっています。
 つまり支配階級はこれをやる以外にいまの経済を延命させることはできません。公務員の7・8%賃下げは「序の口」です。今の国家財政の破綻状況、破綻を乗り切るために国債の7割を買うという現実。日銀がじゃぶじゃぶ金を出している。こんなことが長続きするわけがありません。公務員労働者に対する攻撃、公的部門の全面的民営化、規制緩和が始まる。これはすべてを限界に追いやります。
 そういう状況の中で僕らがやらなければならないことは何か。小さなものでもいいからこの我慢ならない現状の中から労働運動を復権させることです。それができたときに階級的労働運動をつくり出すことができる。この数年が勝負です。

国鉄改革法はうち破れる!

 このことと国鉄闘争との関係です。やはり、日本では国鉄分割・民営化が、最大の「ショックドクトリン」だった。これと闘い得ていることの持つ意味が本当に大きいと思います。
 ここまできて改めて気づかされたことがあります。国鉄分割・民営化のことについてふりかえって考えてみると、国労本部は国鉄分割・民営化攻撃を正面から見据えることができなかった。国労本部は最初から国鉄改革法とは真正面から闘えないんだというところからすべてを出発させた。
 動労千葉は国鉄改革法を真正面から問題にしてJRに対して訴訟を起こしたわけです。しかし、国労は最初から立ち向かえるはずがないという態度です。国会で法が通っているのに裁判を起こしても立ち向かえるはずがないんじゃないかと。
 だけどここまできてそれが全部ウソだったことが暴き出されました。国鉄改革法でやったようなこと――国鉄とJRがまったくの別法人で国鉄はなくなるんだから全員解雇で、JRは新しくできた会社だから新規採用。しかもその採用過程で不当労働行為があってもその責任は国鉄にあってJRには一切責任は及ばない――こんなことは支配階級もあらかじめ予定していたんではないということが最近よく分かりました。
 国鉄分割・民営化の中心人物であった葛西も、国鉄改革法の案を見て「目からうろこが落ちた」と言っています。こんなことができるのかと。国鉄改革法の国会審議の過程で、「職員の雇用関係についてJRの果たす役割と国鉄の果たす役割はどういう法律関係なんですか」という質問に対して、国会答弁では「国鉄はJRの委任を受けてJRの補助者として名簿を作ります」という答弁をしています。
 ということは、当時の政府でも採用過程がまったく別に区切られているとはいかないと考えていたんです。だから労働委員会のレベルではこういうことに依拠して不当労働行為が認定されて、JRに採用しなさいという命令が出たわけです。

ここで勝てば世の中は変わる

 これが全部ひっくり返されたのが裁判所でした。最終的には1998年の5・28判決です。なんでそうなったか。その過程で政府は国労に対して「大会で国鉄改革法を承認するという決定を行え」と迫りました。その次に「JRに法的責任なしと決定しろ」と迫った。自民党が大会でこれを決めろと組合に迫るのは異常なことです。
 つまり、国鉄分割・民営化型の解雇を合法化させたのは誰だったのか。資本や国家権力とともに、JR総連革マルと国労の幹部だったということです。ここまで来て初めてよくわかった気がします。労働組合が「政治解決」という形で本質問題から屈服するという重大さ、そのことをもう一度確認しなければいけないと思います。
 そういう点でいうと僕たちは小さいながら核心をついた闘いをやってきた。「4・9政治和解」に対して闘いを継続しようとしたこともそうですし、その結果として「6・29判決」が勝ち取れた。「6・29判決」があったから井手の証言に気がついた。そしたら途端に「白石事件」になった。だから結構核心はついています。
 ここでひっくり返したら世の中は動く。これから安倍政権がやろうとしていることは、これは全部「国鉄方式」が前提にならなかったらできない。橋下がやろうとしていることも全部「国鉄方式」のエスカレートなんです。
 もうひとつ、重大だと思うことは、社保庁の分限免職が、労働組合がまったく闘わなくても、個人的な申立のレベルですら3分の1が撤回になっている。分割・民営化攻撃が中から破綻をきたしているような状況があります。
 動労千葉が国際連帯で受け入れられた一番の理由は何かというと、新自由主義のもとで民営化政策に立ち向かって団結を守り抜いている労働組合は世の中にないということです。確かに言われてみるとそうです。つまりこの闘いを活かさないといけない。これを活かせば階級的労働運動の発展の芽ができてくるんではないかと思っています。(7月27日の動労千葉を支援する会総会での発言をもとに編集したものです)

房州鉄道研究会サイトから転載