2020年7月19日日曜日

日刊動労千葉 第8821号

「人口減少で人材確保が困難」?
真っ赤なウソだ!
なぜワンマン運転に反対するの
か④


 会社は、ブレーキの壊れた車のように、鉄道業務の外注化や中・長編成列車のワンマン化・無人運転化、AI化、地方ローカルの線切り捨てを強引に進めている。

 その口実として掲げられているのが「少子化―人口減少」論だ。「将来的には要員の確保が困難になる」「仕方のないことだ」と描き出そうとしているのだ。さらには、「限られた人材を人ならではの創造的な仕事にシフトする」という。だが、ここには二重三重のウソがある。

「採用困難」なら、なぜ外注化?

 第一に、そのウソが最も分かりやすく示されているのが鉄道業務の外注化だ。本当に人口減少で要員の確保ができなくなると考えているなら、絶対に鉄道業務の外注化などしない。JRですら要員が確保できないなら、なぜ賃金・労働条件が格段に低い下請け会社が要員を確保できるのか? なぜ丸投げ外注化を平気で進めることができるのか?

 会社の言うとおりなら、JRは外注化によって車両検修や保線、電力や信通関係の保守、駅業務などを担う要員を確保することができなくなり、鉄道会社として破たんすることになる。

要員確保どころか〝使い捨て〟

 第二に、要員の確保ができなくなるというのなら、なぜ「ジョブローテーション」なる暴挙に訴えたのか? JRが要員を確保したいと真剣に考えているのなら、運転士職・車掌職を廃止するという愚かな政策を強行するはずがない。

 まして「同一担務最長10年」として、〝その間に自らのキャリアを形成できない者は出向か配転〟という方針がどこから出てくるのか。要員の確保どころか〝使い捨て〟ようとしているのが今のJRの経営姿勢だ。

何が「人ならではの仕事」だ!

 第三に、「人ならではの創造的仕事にシフトする」などというふざけた言い方は絶対に許せない。鉄道の運行と安全を守ってきたのはわれわれ現場の労働者だ。運転士であり、車掌であり、車両検査係であり、線路や施設の保守係であり、駅員だ。机の前でふんぞり返っているお前らに、こんな言い方をされる筋合いはない。

 しかも、その仕事のほとんどは機械化やシステム化では無くなることのない仕事だ。「人ならでは」などとキレイ事を言いながら、そこで働いている労働者ごと外注化し、下請け会社に突き落としているのが現実ではないか。ワンマン運転拡大・車掌廃止にしても、すべての責任を運転士一人の肩に背負わせているだけではないか。安全や輸送障害時の対応、地域に人が生き生活していることを蔑ろにしているだけではないか。

 そういう貪欲な知恵を働かすことが「人ならではの創造的仕事」だと言うのか。だがそれは、企業の利潤は〝創造〟しても、人間にとって、社会にとっての価値は何ひとつ生まない仕事だ。人間社会を破壊してでもJRだけがボロ儲けすればいいという仕事ならざる〝稼ぎ〟に過ぎない。

「AI化」の本質は非正規化攻撃

 第四に、会社が描くAI化された将来の会社の姿も、そのほとんどが〝神話〟でありフィクションだ。無人運転も、ロボット化された無人の工場も、できるのは莫大な投資をしてもコストが回収できるごく限られた職場、線区だけだ。なぜなら投資の絶対的基準は、機械化・システム化にかかる費用が人件費より安価であるかどうかだからだ。〝カネの亡者〟である資本は労働者に楽をさせようとして機械化することなど絶対にない。

 しかも、苛酷な条件下で鉄道を動かす仕事を全部無人化することなど絶対にできない。だから、〝外注化=非正規職化〟こそが攻撃の本質なのだ。どこまで労働者を低賃金でコキ使うことができるのか。そのために外注化し、非正規職化する。実際、職場で何が進んでいるのかをよく見てほしい。

 むしろ、外注化で現業の人件費を徹底的に抑え込んだ結果、集中的に投資してシステム化するべき箇所が浮かび上がってくるという形で事態は進行している。しかしそれは何を生むのか? 今社会全体で起きていることだ。鉄道で働く労働者が絶望的な格差に引き裂かれ、首都圏と地方が引き裂かれる。これがJRが進めていることだ。

利益追求が鉄道破綻もたらす

 結局JRがやっていることは、どんな手段を使ってでも労働者の権利を打ち砕いて人件費を削減し、利益を最大化するということに尽きる。それを貫徹するために組合つぶしを進め、JRを「労組なき企業」にしようとしているのだ。その口実に「人口減少」等を持ち出しているだけだ。

 だが、目先の利益だけを追い求めるその政策こそが鉄道を破たんさせる。

 民営化された地方都市のバス路線が現実にそれを示している。多くの場合、路線毎に民間バス会社に丸投げされている。だが、最低賃金スレスレの酷い労働条件で運転士を集められなくなり、丸ごと撤退する事態が相次いでいる。その時には地方自治体がバス運行する能力は失われており、住民は完全に移動の手段を失う。これが社会問題になっているのだ。起こることは鉄道でも同じだ。

 さらに、民営化・外注化で労働者の権利を徹底して打ち砕こうという施策は〝安全の崩壊〟をもたらし、JRを破たんさせる。技術がいかに発展しようと、安全の最後の砦は現場で働く人間だ。それを絞りとるだけの雑巾のように扱えば、安全は確実に崩壊する。

 鉄道は公共交通機関だ。カネ儲けの道具にしていいはずがない。われわれは断固ワンマン運転に反対する。

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